「ウィニー・ザ・プー」(A.A.ミルン)

何も読み取る必要はありません

「ウィニー・ザ・プー」
(A.A.ミルン/阿川佐和子訳)
 新潮文庫

「ウィニー・ザ・プー」新潮文庫

イギリスの森で暮らしている
クマのプーは、
少年のクリストファー・ロビンと
大の仲良し。
今日も木の上のハチミツを
とろうとしたプーは、
ロビンから大きな風船を借りて、
ふわふわと浮き上がって
試してみるが、
うまくいかない…。

いわゆる「くまのプーさん」です。
かつて石井桃子訳で刊行され、
名作という評価が
定着している作品です
(私は読んだことはありせんが)。

全10話。
それぞれこれといった筋書き
があるわけではありません。
プー、ロビン、コブタのコプタン、
年寄りロバのイーヨー、
フクロウ翁のフクロンなどが集まって、
ほのぼのとした楽しい一時を
つくり上げるという、
ただそれだけです。
では、
本書から何を読み取ればいいのか?

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何も読み取る必要はありません。
登場人物たちの
とりとめのない会話や言葉遊び、
プーのつくる歌などで、
筋書きは至る所で停滞し、
ゆっくりとした時間だけが
流れていきます。
その緩やかな時間に身を浸すことこそ
本書を「読む」ということ
なのではないかと思うのです。

もともと本作品は
作者・A.A.ミルン
息子であるクリストファー・ロビンに、
テディ・ベア(ぬいぐるみ)のプーを
主人公に見立てた自作の物語を、
読み聞かせをしているという設定で
書かれたものなのです
(「はじめに」「第1話」「第10話」に
その様子が描かれています)。

したがって私たちも、
幼いロビンの心で、
本作品をただありのままに
受け入れればいいのです。
あれこれ考える必要はないのですが、
頭の中にしっかりと場面を
描き出すことが大切だと思います。

先入観を持たず、
虚心坦懐に受け止めましょう。
そうすれば
森の中から現れるプーさんは、
薄茶色のテディ・ベアであるはずです
(まちがっても黄色い毛の色に
赤いシャツを着ている姿には
ならないはずです)。
他の動物たちも、
ややくすんだ色合いで
立ち現れるはずです(原色で
塗りたくられていないはずです)。
イギリスの森や丘を背景に、
それらぬいぐるみたちが
ゆっくりと静かな時間を刻んでいる姿を
想像できればしめたものです。

大人には
困難な作業となるかも知れません。
特にディズニーアニメの
印象が残っているかぎり。
しかし中学校1年生の
しなやかな感性なら、
もっともっと豊かな情景を
その心の中に
描くことが可能だと思います。
中学生の朝読書にお薦めします。

〔A.A.ミルンのミステリについて〕
実はこの童話作家ミルンは、
一作だけミステリを書いています。
それも傑作中の傑作です。
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